「母の日」の頃になると思い出します。 母の愛は、永遠（とわ）に  

「仕立て直し」「着物のお手入」は、日本の着物の文化です。

「海より深く、山より高い」母の愛は、時代が変わっても、永遠に生きています。

ここに紹介します絞りの羽織。

｢孫の宮参りに着せたいのですけど、何とかなりませんでしょうか」と言うことで、お祖母ちゃんが持ってこられました。

話を色々お聞きしますと、若い時に作られ、楽しい思い出が一杯ある羽織らしいです。

その後、子育てやら、社会復帰やらで、一時着物の世界から遠のいておられたようですが、自分の娘の宮参りは、自分の思い出深い羽織を絶対着せたいと夢を持ち続けられたそうです。

しかし神様のいたずらでしょうか？

女のお子様(娘さん）に恵まれずその願いは叶えられなかったようです。

それでも神様は見守ってくださった様で、息子さんに、女のお子様が授かり(内孫）・・・・。

今回、そのお孫さんに着せたいと言うことでした。

ご意向をお伺いして、この様に、四つ身に生まれ変わりました。

この赤がエンジと言うか、黄味を帯びた朱色でしたので、初々しいお孫さんにやさしく、

生命力の強い赤が、 お孫さんの健やかな成長を護り支えてくれるのではと思うことでした。

お客様と、生まれ変わった四つ身の着物を送り出した後、 あのお祖母ちゃんは「何時かは、孫に着せてやりたい」の思いで三十数年間、 タンスの中に大事に秘めておられたのだなと思うと、「時代は代わっても母の愛は変わらない」のだなと、思うことでした。

母の日が近づくと、このお祖母ちゃんのことを思い出します。

そして、まだお会いした事のない、お孫さんですが「健やかな成長を祈ります。

母様の思いを娘さんに

 これも伝えたい日本の家庭の文化

娘さんが、お茶を習い始め、着物に関心を持たれ始めたそうです。

数が欲しいと言う事もあったのでしょうが、お母様が自分が若いとき着ていた絞りの羽織は、何とか使えないだろうか？と相談を受けました。

日頃より着物のお手入れには気を使っておられるお母様ですが、良く診ますと、衿の所に目立つシミがあります。きれいに落とせたとしても、娘さんが果たしてお召しになられるだろうか？

私共は、「多分NO]でしょうと申し上げました。お母様の時代の「派手」と、娘さんの時代の｢派手」の感覚が違うからです。

見える量(面積）を少なくすれば活かせる色、生きる色はあリます。帯にされたらどうですか？と提案いたしました。

｢人が締めてない、自分だけの、オンリーワンの帯」「自分だけの思い出が繋がった帯」

と言うことで誇りを持って締めておられるようです。

絞りの生地の仕立ては、シボがあり苦労されるようです。

 着物大好きだから生まれる発想・・・・・

まさしく「世界に一つだけの花」、オンリーワンの着物ですね。

お着物のお手入れには、もう一つの考え方として、作り変え、新しい楽しみを作り出す智恵が昔からありました。子供物成長と共に思い出を一杯創ってくれた色無地の着物。生地がしっかりしているので何とか活かせないでしょうか？との相談で、色無地を持ってこられました。

拝見した所、今では作られていない、珍しい模様の地紋、地色も無彩色でした。

オシャレなフォルムのポンチョを創りました。長い間楽しみましたが，このスタイルが着易いので、まだ着たい。とのことで、またいつもの通り女同士で、ワイワイガヤガヤ・・・・生まれ変わったのが、このポンチョです。

このお仕立は、着物の技術と、洋裁の技術を備えた仕立て屋さんでないと、襟のやさしいカーブを出せない高度な、仕立ての技術です。

「思い出の着物は捨てられない。着物に命がある以上は、思い出と共に大事に楽しみたい。」

物を愛おしみ、物を慈しむ日本人ならではの美徳のように思います。